ラビット(仮名)と行くラスト静岡

 

3回目の青木クリニック訪問は、この病気騒動で訪れる最後の訪問と心に決めていた。

 

シコリの中の寄生虫が死滅したのか否か。死滅したとすれば、このシコリは消える可能性があるのか否か。

 

もしシコリが自然に消えないのであれば「外科手術」が「永遠の二重顎」の二択になる。嫁入り後ならまだしも、嫁入り前(嫁入れるかは不明)例え1ミリであっても美しくありたいのが乙女心である。

 

そんな思いを頭に巡らせていると、ラビット(ドバイ人)が新型プリウスでお迎えにやってきた。彼は中古車(トラックや農機具なども含む)の海外輸出や国内での販売を手掛けており、その関係で自分の好きな車に好きなだけ乗れるのだ。今回は旅の移動距離が長い事もあり、新型プリウスで来てくれた。

 

新型プリウスは座席シートが暖まる仕様に加え、便利機能をこれでもかと搭載していた。そして、長らく苦しめられてきたエコモード機能が無くなっているのを知り、セコセコせずに旅行できるとホッと胸を撫でおろす。(貧乏性の私はプリウスに乗ると、エコモード状態で走らなければ罪悪感を抱いてしまうのです)

残り走行距離1000キロとの表示を見てプリウス愛が急上昇。

 

いざ出発。目指すは遥か彼方240キロ先の焼津。

貧乏性の私達は国道1号線を駆使し、下道を地道に行く事を選択。

日本の高速道路は高すぎる!どうして交通費を高くするんだこの国は!

とグチグチ言いながら、絶えず話続けては疲れたら色んな国の音楽を流して楽しみ、

ヒンディー語の会話レッスンをみっちり付けてもらったりなどする。

 

 

ドバイで生まれた彼は、ファミリービジネスの関係でパキスタンで過ごす事も多かったらしく、アラビア語に加えてウルドゥー語も話す事が出来る。ウルドゥー語は、言葉としては9割方ヒンディー語であるにも関わらず、使用している文字はアラビア語の不思議な言語だ。なので、ヒンディー語の練習相手には正にもってこいの存在なのだ。

(彼曰く、ウルドゥー語はお上品に聞こえるが、ヒンドゥー語は美しくないらしい)

 

語学学習も捗り、中東地域の音楽の知識もつき、「君がもし名古屋に住んでくれるならば、引っ越し祝いに可愛い猫をあげよう」などと口説かれている内に無事焼津に到着。

 

前回立ち寄った頬っぺた落ちる地元の名店でご飯をし、無事1日目の終了。

 

2日目は、朝早く布団から這い出て富士宮へと向かう。爆音のイスラム音楽を鳴らしながら失踪するプリウスは目を引く存在だったかもしれない。

 

行き道がてらに、これから行くクリニックは少し様変わりな事を伝える。

「あぁ。知ってるよ。イスラムでは黒魔術師(BLACK MAGIC)と呼んでいるね。僕は世話になったことは無いけれども、通っている人は少なくないみたいだね。日本にもあるとは知らなかったな~」と勝手に納得されたご様子。

 

黒魔術??悪い印象しか無いんだけど、まぁいっか!

百聞は一見にしかず!

 

無事クリニックに到着すると、以前と比べられない程の人の賑わいが。

この日は12月の28日。一年の最後の診療日とあって駆け込み需要が爆発しているのだろうか。

 

「インフルエンザじゃなくって、た・だ・の風邪だって~~」

と突然横から声が聞こえ、振り向く。風邪の診断の時も、先生はあの不思議な機械と不思議なカードを使うのだろうか?特殊な事情を抱えた人達が集う場所という勝手な印象を抱いていた事もあり、普通の病気の診断がある事に新鮮味を覚えた。そういえば、レントゲン室もあるにはあったな。

 

 

そうこうしている内に順番が回ってきて診察室に通される。

先生はラビットの顔を見て、少し驚いた素振りで「ん?外国の人?どこの人~~?」

と聞く。外国人が訪れたのは、これが初めてだったのかもしれない。

 

症状を話すと先生は、スッと黒い棒を私の頭上に振り上げた。

「お!首元の寄生虫は全滅してるね!良かった~~ただ、この腫れが引くかは保証できないな、、出来る限りやってみるから手を出して」

漢方薬を「これじゃない。これは効きそう。これは違う。」と選択しながら処方してくれる。

 

どうなるか分からないが、これが最後のチャンス。もし腫れが引かなければ外科手術を決めよう。と決意し、行き帰り共に専属の運転手を務めてくれた帰路につく。

 

さて、どうなることやら。